2012年08月30日

ABO式血液型? ミドリシジミの遺伝的多型

10夕).jpg
なわばりを見張るミドリシジミのオス

 8月の夕方、ハンノキの木立の西日を強く受ける側、5〜15mの高さで、なわばりを争ってくるくると飛ぶチョウ。7月の話題にも登場した仲間の一種で、これは正式名称が「ミドリシジミ」という種類です。じっくり観察すると、オスたちの活動のピークは17時から18時だということがわかります。
 一方、メスを見たくて何度も通うと、15時半から16時半によく出てきていることがわかりました。オスより早い時間帯で、地上2m以下の高さを飛びます。オスたちが熾烈な肉体的闘争に明け暮れるのと違い、メスは低い葉の上での日光浴と、ハンノキ幼樹への産卵行動をくり返し、10〜15分で林の中へ消えていきます。そしてまた別のメスが姿を現して、同じようなことを行います。

スライド3.jpg
産卵中のメス         早朝、日光浴のため低い場所に下りてきたオス

 オスが「全員の時間」を持つのに対し、メスが持つのは「個別の時間」です。そして、時間的にも空間的にも、オスとメスの行動が重ならなく見えるから不思議です。いつどこで出会い、交尾を行っているのでしょうか。

 このチョウでよく知られているのは、メスに遺伝的な4タイプの色彩があって、ヒトの血液型同様、A、B、AB、Oに分けられることです(かつて大学入試の共通一次試験に、遺伝の問題として出題されたことがあります)。
 B型やAB型に現れる青い鱗粉の光沢は、フェルメールの絵を思わせる美しさ。去年はO型しか見られませんでしたが、今年は4タイプを確認できました。目で見える違いだけが遺伝的多様性ではありません。でも、小さな個体群(観察している木立では、多い年でも雌雄合わせて30〜40匹)の中にすべての型が現れるのは、ひとまず安心なことです。

スライド1.jpg
メスの遺伝的4タイプ(左からA型、B型、AB型、O型)


posted by あーすわーむ事務局 at 11:52| Comment(0) | なし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月11日

木の葉のゆくえ

シラカシ葉.jpg
シラカシ(ブナ科の常緑樹)の新緑

 木々が葉を広げ生き生きと輝いている季節、青空と緑のコントラストを楽しんだ後、足下を見てみませんか? 自然が作った葉脈標本を見つけることができます。

シラカシ葉脈.jpg
自然が作ったシラカシの葉脈標本

 葉脈は維管束です。維管束は、根から吸い上げた水を通す道管と、葉で作った養分を運ぶ師管からできています。葉脈を構成する主な成分は、セルロース、ヘミセルロース、リグニン。これらはアルカリ溶液には溶けないため、人工的に葉脈標本を作るときは、ふつう苛性ソーダを利用します。では、自然の中で見られる葉脈標本は、どのようにしてできたのでしょうか。

 樹の根元に積もった葉をめくっていくと、まず目に入ったのがダンゴムシ。あわてて葉の中に逃げ込んでいきます。ミミズもにょろにょろと土の中にもぐっていきます。その他、1mmもないような虫が動き回るのが目に入ります(こんな時、ルーペでのぞくのがお勧め)。こうした小動物や菌類などが枯葉を食べ、分解し、土に戻す過程で、葉脈標本ができている段階があるのです。

ダンゴムシとシラカシ.jpg シラカシ菌.jpg
左:ダンゴムシの左の枯れ葉では表面が分解され始め、葉脈が露出し始めている 
右:シラカシの枯れ葉がまだ硬く形を残しているときには、黒い斑点が目立っていた(菌類による裏黒点病と思われる)


 葉の分解すべてを同じ菌が受け持つわけでなく、分解過程によって活躍する菌が異なります。ダンゴムシの写真をもう一度見ていただくと、左の葉に裏黒点病と思われる痕跡も見えますが、葉の色から、別の菌も働いていると思われます。
 一見、枯れ葉が積もっているだけのように見える木の根元も、掘り返していくと多様な生物の世界が見えてきます。一つの資源に対して、時間軸に沿って多種の生物がかかわっているのです。
 自然が作り出した葉脈標本も、いずれは葉脈の成分を分解できる菌たちの働きによって、土に還ってくのでしょう。その働きは、新しい植物個体を育てることにもつながるのでしょう。



posted by あーすわーむ事務局 at 22:42| Comment(0) | なし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする