2012年12月15日

ウズラに復活はあるか

 昔は野草地だったあちこちの放牧場が、戦後、外来の牧草地に変わりました。多様な草花のあった草原は一様になり、生態系は単純化したことでしょう。鳥を例にとると、キジとウズラの2種類がいた「キジ科」の鳥は、キジだけに。モズとアカモズの2種類がいた「モズ科」の鳥は、モズだけに。極端な言い方ですが、科によっては種の多様性が1/2になったのです。

スライド2.jpg
かつて草原周辺の疎林に共存していたアカモズ(左)とモズ。今ではほとんどモズしかみられない。
アカモズは東南アジアから渡ってくる夏鳥。


 2012年の5月から6月にかけて、上信越高原のある牧場で、1羽のウズラがさかんに鳴いていました。昔はウズラが多かったというこの牧場ですが、記録が絶えて久しく、おそらく30年ぶりの確認だったと思います。現在、ウズラは北海道にわずかに残るだけで、本州ではほぼ絶滅しましたが、復活の兆しがあるのでしょうか。

P5181024.jpg
キジ。長距離は飛べず、渡りはしない。

 復活ウズラ(?)はどこから来たのでしょうか(かつて行われていた放鳥は、野生個体との交雑が懸念されるので、現在行われていません)。
 ウズラは渡り鳥。北日本やシベリア大陸で繁殖して、秋に南下し、東海地方以南の河川敷などで越冬します。春には北帰行。その途中、休憩に立ち寄った牧場でたまたま異性と出会い、そのまま居着いたのかもしれません。
 それとも、広大な牧場の片隅に細々と生き残っていたのでしょうか。ウズラの寿命は10年前後と思われますから、30年間も絶えることなく命のバトンを渡し続けていたとしたら、一定規模の個体群が見過ごされていたのかもしれません。
 激減し、5年前に狩猟鳥から外されたウズラ。緊急な調査が必要です。
        ウズラ.jpg
ウズラ(Craig Robson 2002 ”A Field Guide to the Birds of Thailand” より)。
キジ科としては珍しく、海や山を越えて渡りをする。



posted by あーすわーむ事務局 at 22:30| Comment(0) | なし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする