私たちの目にはっきり違って見えても、遺伝的多様性はそれほど高くない、ということは多いと思われます。
一本の木にたくさん根を下ろしたヤドリギ。水分や無機物を吸収し、そこから先の枝を枯らしてしまうこともあります。近づいてよく見ると、黄色い実の株と赤い実の株が。赤い実のものはアカミヤドリギという品種とされています。
植物の品種という言葉はあいまいです。同種ですから生殖的隔離がないことはもちろん、同じ株の実の色が年によって違っていたとか、一株が同時に二色の実をつけていたという観察例も。
ヤドリギの実は人が口にしても甘みがあり(舌に「しびれ」も感じます)、強い粘性があります。これを食べた鳥の糞が強い粘り気を持ち、それによって木の枝にからまるので、そこからまた根を下ろせるのです。鳥も排泄の際に気持ちが悪いのでしょう、積極的にお尻を枝になすりつけます。
ヤドリギは、その成長も粘り気が持ち味。樹皮から維管束まで根を通すのに何年かかかるようで、それまでは枯れもしないかわりに、成長の気配も見られません。最初の葉が出るまで数年。あの大きく丸い株が目につくようになるまでには、十年ぐらいかかっているのです。
http://w2222.nsk.ne.jp/~mizuaoi/
http://15.pro.tok2.com/~satoubin/yadorigi.htm
ヤドリギの実を好む鳥としては、冬鳥のレンジャク(連雀)類が有名です。尾の先が黄色いキレンジャクと、尾の先が緋(赤)色をしたヒレンジャクがいます。実の色も黄と赤の二色、鳥の色も黄と赤の二色というのは、偶然でしょうか。
キレンジャク(左)とヒレンジャクの群れ。食べているのはいずれもキヅタの実。
レンジャク科はあと1種類、北米にいるヒメレンジャク(尾の先は黄色)のみ。
キレンジャクはロシアからヨーロッパまで広く分布し、北・東日本にわりあい多く渡来します。主に北海道経由で日本列島を南下するのだともいわれます。
ヒレンジャクはロシアのアムール川下流域が繁殖地で、どちらかというと西日本に多く渡来します。主に中国東岸から朝鮮半島経由で西日本に上陸するのだろうといわれます。
小鳥たちは、その気になれば一晩(約10時間)で日本海を渡りきることができますし、その途中、離島で羽を休めているものも多くいます。しかし、できることなら、海上はあまり飛びたくないに違いありません。最終氷期に大陸と地続きだった二ヵ所が、現在もそれぞれの渡りのメインルートとして維持されているものと考えられます。