ゲンゴロウといえば、昔は田んぼにもふつうで、長野県などでは食用にもされていました。ところが近年の激減はただごとではなく、2012年には準絶滅危惧種から「準」が取り除かれるランクアップ(環境省 2012)。
(左)オモダカと、実りの稲穂
(右上)ゲンゴロウ (右下)ヒメゲンゴロウ(左)とコシマゲンゴロウ
長野県のある地方では、約10年前にドジョウとともに大量死しているのがみつかりました。水田の除草剤などが影響した可能性も。空を飛んでため池と水田を行き来するゲンゴロウも、濃い農薬にはやられてしまいます。さらに、ブラックバスが放たれた池では壊滅しますし、マニアによる採集圧も馬鹿になりません。一方、広島県尾道市では、自然にやさしい農法のシンボルとして、「源五郎米」のブランド化に成功しています。
さて、大量死以来みつかっていなかったゲンゴロウを探しに探し、つい最近、再発見しました。この地域では、1980年代後半に残っていた水田(稲作全盛期の半分以下)の90%が、その後、休耕田に変わり、乾燥化が進んでいます。最大のため池にはブラックバスが泳いでいます。再発見がつかのまの喜びとならぬよう、彼らの生息の実態把握と環境保全のため、すぐに策を講じたいものです。
(上左)ゲンゴロウ。弱った小魚やカエルの死骸などを食べる
(上右)ゲンゴロウによく似た別の仲間、ガムシ。こちらは水草などを食べる。やはり減少が心配されている
(下)まだ水の残る休耕田。浅瀬には浅瀬ならではの種類がいるはず
日本全体では140種類ものゲンゴロウがいますが、一つの地域では多くても十数種類でしょうか。よく知られているものでは、ふつうに見られる順に、ヒメゲンゴロウ(小型種)、コシマゲンゴロウ(小型種)、クロゲンゴロウ(中型種)、ハイイロゲンゴロウ(小型種)、シマゲンゴロウ(小型種)、ゲンゴロウ(大型種)など。これらの種の多様性を指標に、地域の水辺の環境評価ができるはずです。そうした方面の研究が進むことも期待されます。