2014年08月17日

日陰者にはしたくない

ジャノメ&ヒカゲチョウ.jpg
比較的ふつうの種類:左からジャノメチョウ、ヒメウラナミジャノメ、ヤマキマダラヒカゲ、クロヒカゲ

 ヒカゲチョウやジャノメチョウという昆虫がいます。林の中などにいる、ベージュの地に目玉模様のチョウたち。花よりも樹液や獣の糞尿などによく来ていて、幼虫はササやメヒシバなどイネ科の植物や、スゲ類(カヤツリグサ科)を食べる種類が多い仲間です。

 意識して目を向けてみると、「日陰」にもいろいろあって、似た者ぞろいのこの仲間も、すみ分けや食い分けをしながら進化・分化してきたことがわかります。地味な特徴が紹介されがちなこの仲間、実は希少種も多く含まれています。

ジャノメ&ヒカゲチョウ2'.jpg
減少している種類:左からキマダラモドキ、ヒメキマダラヒカゲ

 最大級のオオヒカゲ(長野県絶滅危惧U類)は、大きな翅のまったり感が魅惑的です。生息地はカサスゲなどのある、暗く湿った林。生い茂ったやぶをふわりひらりとすり抜けられる、不思議な大型種です。でも、チョウのメッカ、軽井沢でも、生息地はごくせまい一ヵ所しか知られていないほど限られています。そこから明るいところへ出る習性もほとんどないので、分散していくこともあまり期待できません。

オオヒカゲ.jpg
暗い林から出ることがないオオヒカゲ

 地味なチョウたちが地味なものを食べ、ひっそりと暮らしているだけなのに、なぜ生存を脅かされなければならないのでしょう。
 食草の分布を調べるのは、言うほどたやすくありません。食草があってもなぜかいない、ということも珍しくありません。危険分散のためチョウを移植するのも、移植先にそれまでいなかった原因を調べなければ、徒労に終わるかもしれません。移植による他への影響も考えなければなりません。
 たくさんの生きものが同様な状況にあるのですから、地域にできるだけ複雑多様な環境を残しておくことは絶対です。たとえば気候や地形や水脈を変えないこと。日なたも日陰も未来に残すべき環境なのです。

オオヒカゲ2.jpg
めったに翅を開かないオオヒカゲ。目玉状ではない黒い斑紋も特徴



posted by あーすわーむ事務局 at 00:16| Comment(0) | なし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする