(上段左から)ギンヤンマ,ムラサキツバメ (下段左から)コムラサキ,ヤマトタマムシ
昨年、東海地方のため池の多い地域に調査に行くことが何度かありました。
池を中心に都市公園になっている場所もあり、市街地に囲まれながらもギンヤンマやチョウトンボが多く、金緑色のタマムシや、ヒクイナという鳥(他の地方では湿地や水田が残っていても壊滅に近い)も生息していました。ヒクイナのような種は、濃尾平野ぐらいの広さで良好な環境が保たれないと、繁殖集団として十分な個体数を維持できないのだと実感しました。
水田にふつうにいたヒクイナの声は、古来より『くいなの戸をたたく音』として初夏の宵の風物詩だった
一方、湿地には当然のようにアメリカザリガニとウシガエルが。胴長靴を履いて、沼の泥炭に腰まで浸かっていると、シオカラトンボが産卵に来ました。トンボが水面に尾をつけてちょん、ちょん、と産卵するそばから、メダカが集まってきて卵を食べていました。メダカが本当に在来のメダカであったかどうかは定かではありません。
(左)夕方に上陸してきたアメリカザリガニ (右)ウシガエル
やがて、ヌーッと目の前を泳いできたのはヌートリア。戦前から、毛皮をとるために南米から持ち込まれて養殖され、野生化した外来の大型ネズミです。目はよくないのでしょう、水面を音もなく2mまで寄って来たところで、じっとしている私のいる風景に、いつもと違う何かを察したと見え(双方10分ほどフリーズ)、また音もなくUターンしていきました。
瀬戸内地方などもため池が多く、似たような希少種と外来種からなる生物相が特徴になっていると思われます。絶妙なバランスで成り立っていた生態系がこれ以上撹乱されないために、在来の希少種と外来種とが、できるだけ絶妙に無関係でいて欲しいものです。
ヌートリア(ネコより大きいくらいのネズミの一種)