渡りをする大柄で美しいチョウとして有名なアサギマダラ。南西諸島で越冬したものが春に産卵しながら本州を北上し、秋に新世代が南下します。多くのファンが各地で翅にマーキングをして放し、遠方で再捕獲されては話題になり、ロマンを誘います。
ガガイモ科のイケマなどに産卵して幼虫がそれを食べ、その葉に含まれる毒を体内に蓄積。幼虫も成虫も目立つ模様が「食べてもまずいぞ」というPRになっているようです。
ヨツバヒヨドリで吸蜜
オスはヒヨドリバナ属のフジバカマやヨツバヒヨドリから蜜を吸うことで性成熟します。アサギマダラの里にしようと、フジバカマを植える試みもしばしば見聞きします。が、フジバカマは奈良時代に中国から移入されたという説もあり、かつて撹乱の多い河原などでは多かったらしいのですが、少なくとも1950年代以降、国内ではほとんど自生が確認されていません。
秋の七草に数えられる風流さから、「フジバカマでアサギマダラを」という郷愁的な思いもわかりますが、園芸店などで入手したフジバカマを植えるのは反自然的移入ですし、花もそっくりな在来種のヨツバヒヨドリで十分ではないでしょうか。
地域固有の自然のつながりを無理に曲げずに保全していくとりくみが大切です。そして、美しいアサギマダラばかりが特別な存在ではありません。発想を発展させて、ほかの生きものはどうだろうかと目を向ける想像力も必要です。多様性を保全するには、いつまでも一種類に留まっていられないのも現実です。