ノスリ
食物連鎖という言葉は、複雑に入り組んだ生きものどうしの関係を表すのには単純すぎて、あまり使われなくなりました。食物網という図式・概念の方が多く使われます。しかし、マグロはサンマを食べますが、マグロの稚魚はサンマに食われるかもしれません。種類の名前だけで図を描くのには限界があります。
「生態系の頂点」という言葉も耳にし、図にはタカなどが描かれています。でも実際には、タカは種類ごとに狙っている獲物が違い、すべての生態系の頂点に立てるようなタカはいません。
(左)サシバ (右)オオタカ
ノスリはネズミやモグラを多く食べ、時期によってはカエルやヘビや昆虫もよく捕らえます。サシバは両生爬虫類を多く捕らえますが、昆虫や鳥、ネズミなども食べます。オオタカはヒヨドリやカモやキジなど、中型の鳥を多く捕らえます。ハイタカは小鳥専門。クマタカはノウサギ、ヘビ、ヤマドリそのほか中型の鳥を捕らえますが、食糧が豊かでないときは、雪崩などで死んだ動物の肉にもありつきます。
(左)ハイタカ (右)クマタカ
食い分けているからこそ、多くの種類が生き残ってきました。タカの種類の数だけ生態系の頂点があるわけです。頂点の数が多いほど、その場所の環境は獲物の多様性にも富んだ、豊かな生態系といえるでしょう。