キツネが農作物を荒らすといって嫌われることがあります。時期によっては糞の中にトウモロコシやブルーベリーなどが多く見られますが、キツネの主食はネズミやノウサギ、小鳥や昆虫など。植物質だけでは生きられません。
軽井沢の広い農耕地では、朝は山林へ戻るキツネ、夕方は狩りに出てくるキツネをよく見かけます。ところどころ休耕地になっていて、草原性の鳥がすんでいます。オオジシギ、ノビタキ、ホオアカ、コヨシキリ、セッカなど、よそではみられなくなった希少種や、ヒバリ、スズメ、カワラヒワなどです。
左からオオジシギ、ノビタキ、ホオアカ、コヨシキリ、セッカ
いろいろいること、つまり多様性は、一様性に比べ、生態系を安定させます。ある鳥が何かの原因で少なくなっても、別の鳥が補うようにキツネの食卓を支えます。目につきやすいものが多く捕まり、それが滅びる前に別のものが目につきやすくなって捕まり、その陰で前のものがじわじわと数を復活させる、という動きのある関係です。
枯れ草に身を隠し獲物に忍び寄る
「キツネが増えた」という言う人もいますが、多くは主観的な印象でしょう。家の周囲にたまにしか現れなかった1頭が、何度か続けて来れば、「増えた」と言われてしまいます。キツネにはある程度なわばりがありますし、一カ所で過密に暮らせるほど獲物は多くありません。また、子ギツネのすべてが大人になれるほど、自然界は甘くありません。小鳥もキツネに対応できる警戒心を身につけています。肉食の動物は狩りのために高い技術が必要で、常に飢餓と闘いながら広い範囲を探索して生活しています。