左下がアナグマ、右上はキツネ。けんかせずにすれ違った
日本の中型獣というと、何種類ぐらい思い浮かびますか。外来種を除くと、キツネ、タヌキ、テン、ノウサギ、ニホンザル、地方によってはクロテンやヤマネコ、昔はニホンオオカミやニホンカワウソも。
そんな中、必ず忘れられるのが、ニホンアナグマです。冬毛のタヌキのようにずんぐりした体型で、同じイタチ科のテンなどとは敏しょうさも違います。昔はタヌキとともに人を化かす正体不明の動物と思われ、「ムジナ」の名で怪談にも登場しました。現在も山間部や牧場周辺などにふつうに生息していますが、鼻筋が白っぽく見えがちなため、最近ではハクビシンに間違われます。
目は悪いが臆病者で、驚くと速くはないが猛ダッシュ 梅雨の頃、生後1か月ほどの子どもが出てくる
毎年4月20日頃になると、林の縁でアナグマを見かけることがよくあります。冬ごもりから出てくる時期なのです。目が悪いので、道路端でぼーっとしていたりします。林の中にモグラのような複雑な巣穴を地中に掘り、いつもメンテナンスをするのが趣味。穴の外は心地よい昼寝のためのテラスにしています。出入り口がたくさんあるのは敵に侵入されたときに逃げるためです。
林の中の岩場をすみかにする親子
鼻から唇にかけて嗅覚と触角が鋭く、イノシシと同様に、落ち葉の下からミミズを探し出して食べます。昆虫や地面に落ちた果実などもふつうに食べますが、農作物を荒らす害獣ではありません。ところが、あまり知られていないがゆえに、気の毒な命の落とし方をするものもいます。「アナグマがいる」という通報だけで、駆けつけた猟友会の方に撲殺されたりしてしまうことも。
タヌキがいて、キツネがいて、アナグマがいて、テンがいて……これが山里の健全な中型獣の多様性です。ミミズや昆虫、カエルやネズミなどの小動物を食べ、豊富な資源を分かち合い、微妙にすみわけながら、暮らしているのです。
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