地域によっては里山で狩りをするニホンイヌワシ。
大陸では、イヌワシの多くは平原で狩りをします。激減中のニホンイヌワシは、昔は平野部にも生息していたようですが、20世紀以降はもっぱら深山の鳥です。でも、体が大きいため林内では獲物が捕れず、林縁や、高山帯・亜高山帯の草原・裸地が主な狩り場です。
ノウサギは30年間で10分の1に減ったという情報もある。
減っている理由には、森林化が進み、狩りのできる空間が減ったことや、ノウサギが減少したことが考えられます。かつては獲物の80%近くをノウサギ、ヤマドリ、ヘビ(多くはアオダイショウ)が占めていました。近年は、ヒナに与えるのが圧倒的にヘビばかりになり、それでは栄養不足で、ヒナが大きくなれないのです。
鳥のヒナはぎりぎりの餌の量でも、一定の日数で巣立ちます。しかし、巣立ったときの体重が十分にないと、その後、3ヵ月も生きられないのが普通です。20つがいのイヌワシが繁殖している県でも、最近は巣立つこと自体がゼロ、という年もあります。
ヤマドリは森林の鳥だが、地域によっては稲刈り後の田へ
落ち穂をついばみに出てきて、イヌワシがそれをねらうという。
環境の多様性が失われると、食物網の網の目がほころび、まず頂点の生きものが脅かされます。もし草原や林縁の環境が復活すれば、ノウサギもすみやすいでしょうし、イヌワシはいろいろな動物を獲物にできるでしょう。
アオダイショウなどの爬虫類は、体温を上げてから活動するため、日光浴が欠かせない。
その最中に猛禽にみつかると思われる。
イヌワシ目当てのカメラマンが集まる場所があります。とても高額なレンズをかまえている人たちが、意外にイヌワシの生態を知らず、興味もないのに驚かされます。「いなくならないうちに撮らねば」「動物の死体があったら(イヌワシをおびき寄せるため)谷へ放り投げてくれないか」などの声を聞くと、お金があり、イヌワシが好きで、その恩恵を受けている人たちが、生態系に何も還元しようとしてくれないことに愕然とします。
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