2018年02月05日

イヌワシの少子高齢化

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地域によっては里山で狩りをするニホンイヌワシ。

 大陸では、イヌワシの多くは平原で狩りをします。激減中のニホンイヌワシは、昔は平野部にも生息していたようですが、20世紀以降はもっぱら深山の鳥です。でも、体が大きいため林内では獲物が捕れず、林縁や、高山帯・亜高山帯の草原・裸地が主な狩り場です。

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ノウサギは30年間で10分の1に減ったという情報もある。

 減っている理由には、森林化が進み、狩りのできる空間が減ったことや、ノウサギが減少したことが考えられます。かつては獲物の80%近くをノウサギ、ヤマドリ、ヘビ(多くはアオダイショウ)が占めていました。近年は、ヒナに与えるのが圧倒的にヘビばかりになり、それでは栄養不足で、ヒナが大きくなれないのです。
 鳥のヒナはぎりぎりの餌の量でも、一定の日数で巣立ちます。しかし、巣立ったときの体重が十分にないと、その後、3ヵ月も生きられないのが普通です。20つがいのイヌワシが繁殖している県でも、最近は巣立つこと自体がゼロ、という年もあります。

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ヤマドリは森林の鳥だが、地域によっては稲刈り後の田へ
落ち穂をついばみに出てきて、イヌワシがそれをねらうという。


 環境の多様性が失われると、食物網の網の目がほころび、まず頂点の生きものが脅かされます。もし草原や林縁の環境が復活すれば、ノウサギもすみやすいでしょうし、イヌワシはいろいろな動物を獲物にできるでしょう。

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アオダイショウなどの爬虫類は、体温を上げてから活動するため、日光浴が欠かせない。
その最中に猛禽にみつかると思われる。

 イヌワシ目当てのカメラマンが集まる場所があります。とても高額なレンズをかまえている人たちが、意外にイヌワシの生態を知らず、興味もないのに驚かされます。「いなくならないうちに撮らねば」「動物の死体があったら(イヌワシをおびき寄せるため)谷へ放り投げてくれないか」などの声を聞くと、お金があり、イヌワシが好きで、その恩恵を受けている人たちが、生態系に何も還元しようとしてくれないことに愕然とします。




posted by あーすわーむ事務局 at 17:59| Comment(0) | なし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月21日

アナグマ、知っていれば見られます!

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左下がアナグマ、右上はキツネ。けんかせずにすれ違った

 日本の中型獣というと、何種類ぐらい思い浮かびますか。外来種を除くと、キツネ、タヌキ、テン、ノウサギ、ニホンザル、地方によってはクロテンやヤマネコ、昔はニホンオオカミやニホンカワウソも。
 そんな中、必ず忘れられるのが、ニホンアナグマです。冬毛のタヌキのようにずんぐりした体型で、同じイタチ科のテンなどとは敏しょうさも違います。昔はタヌキとともに人を化かす正体不明の動物と思われ、「ムジナ」の名で怪談にも登場しました。現在も山間部や牧場周辺などにふつうに生息していますが、鼻筋が白っぽく見えがちなため、最近ではハクビシンに間違われます。
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目は悪いが臆病者で、驚くと速くはないが猛ダッシュ  梅雨の頃、生後1か月ほどの子どもが出てくる

 毎年4月20日頃になると、林の縁でアナグマを見かけることがよくあります。冬ごもりから出てくる時期なのです。目が悪いので、道路端でぼーっとしていたりします。林の中にモグラのような複雑な巣穴を地中に掘り、いつもメンテナンスをするのが趣味。穴の外は心地よい昼寝のためのテラスにしています。出入り口がたくさんあるのは敵に侵入されたときに逃げるためです。
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林の中の岩場をすみかにする親子

 鼻から唇にかけて嗅覚と触角が鋭く、イノシシと同様に、落ち葉の下からミミズを探し出して食べます。昆虫や地面に落ちた果実などもふつうに食べますが、農作物を荒らす害獣ではありません。ところが、あまり知られていないがゆえに、気の毒な命の落とし方をするものもいます。「アナグマがいる」という通報だけで、駆けつけた猟友会の方に撲殺されたりしてしまうことも。
 タヌキがいて、キツネがいて、アナグマがいて、テンがいて……これが山里の健全な中型獣の多様性です。ミミズや昆虫、カエルやネズミなどの小動物を食べ、豊富な資源を分かち合い、微妙にすみわけながら、暮らしているのです。
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posted by あーすわーむ事務局 at 17:18| Comment(0) | なし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月03日

キツネの食卓

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 キツネが農作物を荒らすといって嫌われることがあります。時期によっては糞の中にトウモロコシやブルーベリーなどが多く見られますが、キツネの主食はネズミやノウサギ、小鳥や昆虫など。植物質だけでは生きられません。
 軽井沢の広い農耕地では、朝は山林へ戻るキツネ、夕方は狩りに出てくるキツネをよく見かけます。ところどころ休耕地になっていて、草原性の鳥がすんでいます。オオジシギ、ノビタキ、ホオアカ、コヨシキリ、セッカなど、よそではみられなくなった希少種や、ヒバリ、スズメ、カワラヒワなどです。
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左からオオジシギ、ノビタキ、ホオアカ、コヨシキリ、セッカ 
 いろいろいること、つまり多様性は、一様性に比べ、生態系を安定させます。ある鳥が何かの原因で少なくなっても、別の鳥が補うようにキツネの食卓を支えます。目につきやすいものが多く捕まり、それが滅びる前に別のものが目につきやすくなって捕まり、その陰で前のものがじわじわと数を復活させる、という動きのある関係です。
キツネ2'.jpg 枯れ草に身を隠し獲物に忍び寄る
 「キツネが増えた」という言う人もいますが、多くは主観的な印象でしょう。家の周囲にたまにしか現れなかった1頭が、何度か続けて来れば、「増えた」と言われてしまいます。キツネにはある程度なわばりがありますし、一カ所で過密に暮らせるほど獲物は多くありません。また、子ギツネのすべてが大人になれるほど、自然界は甘くありません。小鳥もキツネに対応できる警戒心を身につけています。肉食の動物は狩りのために高い技術が必要で、常に飢餓と闘いながら広い範囲を探索して生活しています。
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posted by あーすわーむ事務局 at 17:19| Comment(0) | なし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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