2016年01月30日

いくつもの頂点

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ノスリ

 食物連鎖という言葉は、複雑に入り組んだ生きものどうしの関係を表すのには単純すぎて、あまり使われなくなりました。食物網という図式・概念の方が多く使われます。しかし、マグロはサンマを食べますが、マグロの稚魚はサンマに食われるかもしれません。種類の名前だけで図を描くのには限界があります。
 「生態系の頂点」という言葉も耳にし、図にはタカなどが描かれています。でも実際には、タカは種類ごとに狙っている獲物が違い、すべての生態系の頂点に立てるようなタカはいません。

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(左)サシバ (右)オオタカ

 ノスリはネズミやモグラを多く食べ、時期によってはカエルやヘビや昆虫もよく捕らえます。サシバは両生爬虫類を多く捕らえますが、昆虫や鳥、ネズミなども食べます。オオタカはヒヨドリやカモやキジなど、中型の鳥を多く捕らえます。ハイタカは小鳥専門。クマタカはノウサギ、ヘビ、ヤマドリそのほか中型の鳥を捕らえますが、食糧が豊かでないときは、雪崩などで死んだ動物の肉にもありつきます。

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(左)ハイタカ (右)クマタカ

 食い分けているからこそ、多くの種類が生き残ってきました。タカの種類の数だけ生態系の頂点があるわけです。頂点の数が多いほど、その場所の環境は獲物の多様性にも富んだ、豊かな生態系といえるでしょう。



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2015年08月11日

アサギマダラとフジバカマ

DSCF1757'.jpg イケマで吸蜜
 渡りをする大柄で美しいチョウとして有名なアサギマダラ。南西諸島で越冬したものが春に産卵しながら本州を北上し、秋に新世代が南下します。多くのファンが各地で翅にマーキングをして放し、遠方で再捕獲されては話題になり、ロマンを誘います。
 ガガイモ科のイケマなどに産卵して幼虫がそれを食べ、その葉に含まれる毒を体内に蓄積。幼虫も成虫も目立つ模様が「食べてもまずいぞ」というPRになっているようです。
DSCF1326.jpg ヨツバヒヨドリで吸蜜
 オスはヒヨドリバナ属のフジバカマやヨツバヒヨドリから蜜を吸うことで性成熟します。アサギマダラの里にしようと、フジバカマを植える試みもしばしば見聞きします。が、フジバカマは奈良時代に中国から移入されたという説もあり、かつて撹乱の多い河原などでは多かったらしいのですが、少なくとも1950年代以降、国内ではほとんど自生が確認されていません。
 秋の七草に数えられる風流さから、「フジバカマでアサギマダラを」という郷愁的な思いもわかりますが、園芸店などで入手したフジバカマを植えるのは反自然的移入ですし、花もそっくりな在来種のヨツバヒヨドリで十分ではないでしょうか。

 地域固有の自然のつながりを無理に曲げずに保全していくとりくみが大切です。そして、美しいアサギマダラばかりが特別な存在ではありません。発想を発展させて、ほかの生きものはどうだろうかと目を向ける想像力も必要です。多様性を保全するには、いつまでも一種類に留まっていられないのも現実です。


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2015年04月02日

ご当地外来種&希少種

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(上段左から)ギンヤンマ,ムラサキツバメ (下段左から)コムラサキ,ヤマトタマムシ

 昨年、東海地方のため池の多い地域に調査に行くことが何度かありました。
 池を中心に都市公園になっている場所もあり、市街地に囲まれながらもギンヤンマやチョウトンボが多く、金緑色のタマムシや、ヒクイナという鳥(他の地方では湿地や水田が残っていても壊滅に近い)も生息していました。ヒクイナのような種は、濃尾平野ぐらいの広さで良好な環境が保たれないと、繁殖集団として十分な個体数を維持できないのだと実感しました。

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水田にふつうにいたヒクイナの声は、古来より『くいなの戸をたたく音』として初夏の宵の風物詩だった

 一方、湿地には当然のようにアメリカザリガニとウシガエルが。胴長靴を履いて、沼の泥炭に腰まで浸かっていると、シオカラトンボが産卵に来ました。トンボが水面に尾をつけてちょん、ちょん、と産卵するそばから、メダカが集まってきて卵を食べていました。メダカが本当に在来のメダカであったかどうかは定かではありません。

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(左)夕方に上陸してきたアメリカザリガニ (右)ウシガエル

 やがて、ヌーッと目の前を泳いできたのはヌートリア。戦前から、毛皮をとるために南米から持ち込まれて養殖され、野生化した外来の大型ネズミです。目はよくないのでしょう、水面を音もなく2mまで寄って来たところで、じっとしている私のいる風景に、いつもと違う何かを察したと見え(双方10分ほどフリーズ)、また音もなくUターンしていきました。
 瀬戸内地方などもため池が多く、似たような希少種と外来種からなる生物相が特徴になっていると思われます。絶妙なバランスで成り立っていた生態系がこれ以上撹乱されないために、在来の希少種と外来種とが、できるだけ絶妙に無関係でいて欲しいものです。

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ヌートリア(ネコより大きいくらいのネズミの一種)




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