2019年11月17日

移入種の排除

上信越高原国立公園のある池で、いないはずの魚が目撃されたのが去年。
捕獲に至るまで、一年かかりました。
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一般的な罠や釣りではうまくゆかず、最終手段で定置網を仕掛けました。
「せめて網だけは回収を」と、台風で増水した池へ、ゴムボートでくり出しました。


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深さ2m以上ある、湿原を伴う池です。

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網にはフナが6匹。大きいのは23cmもあり、ヒゲがあればコイそっくりです。

外来魚ではありませんでしたが、
本来いない場所に放すのがNGなのは、在来種でも同じです。

固有で多様なその場所の生態系が、バランスを崩してしまいます。
それは瞬時に見えないだけに、危険なこと。

保全の仕事は、減ることがありません。


posted by あーすわーむ事務局 at 17:29| Comment(0) | なし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月05日

イヌワシの少子高齢化

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地域によっては里山で狩りをするニホンイヌワシ。

 大陸では、イヌワシの多くは平原で狩りをします。激減中のニホンイヌワシは、昔は平野部にも生息していたようですが、20世紀以降はもっぱら深山の鳥です。でも、体が大きいため林内では獲物が捕れず、林縁や、高山帯・亜高山帯の草原・裸地が主な狩り場です。

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ノウサギは30年間で10分の1に減ったという情報もある。

 減っている理由には、森林化が進み、狩りのできる空間が減ったことや、ノウサギが減少したことが考えられます。かつては獲物の80%近くをノウサギ、ヤマドリ、ヘビ(多くはアオダイショウ)が占めていました。近年は、ヒナに与えるのが圧倒的にヘビばかりになり、それでは栄養不足で、ヒナが大きくなれないのです。
 鳥のヒナはぎりぎりの餌の量でも、一定の日数で巣立ちます。しかし、巣立ったときの体重が十分にないと、その後、3ヵ月も生きられないのが普通です。20つがいのイヌワシが繁殖している県でも、最近は巣立つこと自体がゼロ、という年もあります。

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ヤマドリは森林の鳥だが、地域によっては稲刈り後の田へ
落ち穂をついばみに出てきて、イヌワシがそれをねらうという。


 環境の多様性が失われると、食物網の網の目がほころび、まず頂点の生きものが脅かされます。もし草原や林縁の環境が復活すれば、ノウサギもすみやすいでしょうし、イヌワシはいろいろな動物を獲物にできるでしょう。

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アオダイショウなどの爬虫類は、体温を上げてから活動するため、日光浴が欠かせない。
その最中に猛禽にみつかると思われる。

 イヌワシ目当てのカメラマンが集まる場所があります。とても高額なレンズをかまえている人たちが、意外にイヌワシの生態を知らず、興味もないのに驚かされます。「いなくならないうちに撮らねば」「動物の死体があったら(イヌワシをおびき寄せるため)谷へ放り投げてくれないか」などの声を聞くと、お金があり、イヌワシが好きで、その恩恵を受けている人たちが、生態系に何も還元しようとしてくれないことに愕然とします。




posted by あーすわーむ事務局 at 17:59| Comment(0) | なし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月21日

アナグマ、知っていれば見られます!

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左下がアナグマ、右上はキツネ。けんかせずにすれ違った

 日本の中型獣というと、何種類ぐらい思い浮かびますか。外来種を除くと、キツネ、タヌキ、テン、ノウサギ、ニホンザル、地方によってはクロテンやヤマネコ、昔はニホンオオカミやニホンカワウソも。
 そんな中、必ず忘れられるのが、ニホンアナグマです。冬毛のタヌキのようにずんぐりした体型で、同じイタチ科のテンなどとは敏しょうさも違います。昔はタヌキとともに人を化かす正体不明の動物と思われ、「ムジナ」の名で怪談にも登場しました。現在も山間部や牧場周辺などにふつうに生息していますが、鼻筋が白っぽく見えがちなため、最近ではハクビシンに間違われます。
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目は悪いが臆病者で、驚くと速くはないが猛ダッシュ  梅雨の頃、生後1か月ほどの子どもが出てくる

 毎年4月20日頃になると、林の縁でアナグマを見かけることがよくあります。冬ごもりから出てくる時期なのです。目が悪いので、道路端でぼーっとしていたりします。林の中にモグラのような複雑な巣穴を地中に掘り、いつもメンテナンスをするのが趣味。穴の外は心地よい昼寝のためのテラスにしています。出入り口がたくさんあるのは敵に侵入されたときに逃げるためです。
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林の中の岩場をすみかにする親子

 鼻から唇にかけて嗅覚と触角が鋭く、イノシシと同様に、落ち葉の下からミミズを探し出して食べます。昆虫や地面に落ちた果実などもふつうに食べますが、農作物を荒らす害獣ではありません。ところが、あまり知られていないがゆえに、気の毒な命の落とし方をするものもいます。「アナグマがいる」という通報だけで、駆けつけた猟友会の方に撲殺されたりしてしまうことも。
 タヌキがいて、キツネがいて、アナグマがいて、テンがいて……これが山里の健全な中型獣の多様性です。ミミズや昆虫、カエルやネズミなどの小動物を食べ、豊富な資源を分かち合い、微妙にすみわけながら、暮らしているのです。
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posted by あーすわーむ事務局 at 17:18| Comment(0) | なし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする