2013年09月08日

コナラ林のわくわくツアー

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 テントウムシ(ナミテントウ)にいろいろな斑紋のものがいることはよく知られています。コナラの葉で交尾している2匹は、明らかに赤い星の数が違います。右の方にはアリマキと、アリマキが出す甘い汁をもらうクロクサアリ。テントウムシはアリマキの天敵ですから、このアリたちは、アリマキをテントウムシから守っているに違いありません。クロクサアリは集団でアオムシを襲って食べたりもします。コナラの木の根元に、彼らの巣がありました。

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 朝日を浴びに林縁に出てきたムモンアカシジミ。数が減少しているチョウです。このチョウは、クサアリ類の発生しているコナラやクヌギの木を探し、卵を産みます。幼虫は木の芽も食べますが、やがてアリマキの出す汁を吸い、アリマキそのものも食べる肉食性になります。この幼虫はアリに襲われないよう、アリマキと同じ匂いの物質を出しています。そのため、クサアリは何となく幼虫につきまとい、なかば騙されて、幼虫を保護します。

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 幼虫はクサアリの通り道でさなぎになりますが、そこからが大変です。さなぎから羽化すると、もう匂いは出ないからです。たちまちアリに囲まれて、飛べないうちに襲われてしまうこともあります。翅が伸びきるまで、新成虫は安全な場所に、命からがら走っていきます。
 朝のムモンアカシジミを反対から見ると、左側の羽がちぢれたようになっていました。アリに襲われる中で、上手に羽化できなかったのでしょう。
ムモンアカシジミの生活史をぜひご参照下さい(『軽井沢の蝶』より)

 雑木林はどこもかしこも昆虫の王国。ツアーの魅力はたっぷりです。

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コナラの切り株に産卵するクロナガタマムシ      鉈目にひそむスジクワガタ




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2013年07月15日

ゲンゴロウ類の種多様性

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 ゲンゴロウといえば、昔は田んぼにもふつうで、長野県などでは食用にもされていました。ところが近年の激減はただごとではなく、2012年には準絶滅危惧種から「準」が取り除かれるランクアップ(環境省 2012)。

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(左)オモダカと、実りの稲穂 
(右上)ゲンゴロウ (右下)ヒメゲンゴロウ(左)とコシマゲンゴロウ


 長野県のある地方では、約10年前にドジョウとともに大量死しているのがみつかりました。水田の除草剤などが影響した可能性も。空を飛んでため池と水田を行き来するゲンゴロウも、濃い農薬にはやられてしまいます。さらに、ブラックバスが放たれた池では壊滅しますし、マニアによる採集圧も馬鹿になりません。一方、広島県尾道市では、自然にやさしい農法のシンボルとして、「源五郎米」のブランド化に成功しています。

 さて、大量死以来みつかっていなかったゲンゴロウを探しに探し、つい最近、再発見しました。この地域では、1980年代後半に残っていた水田(稲作全盛期の半分以下)の90%が、その後、休耕田に変わり、乾燥化が進んでいます。最大のため池にはブラックバスが泳いでいます。再発見がつかのまの喜びとならぬよう、彼らの生息の実態把握と環境保全のため、すぐに策を講じたいものです。

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(上左)ゲンゴロウ。弱った小魚やカエルの死骸などを食べる 
(上右)ゲンゴロウによく似た別の仲間、ガムシ。こちらは水草などを食べる。やはり減少が心配されている
(下)まだ水の残る休耕田。浅瀬には浅瀬ならではの種類がいるはず


 日本全体では140種類ものゲンゴロウがいますが、一つの地域では多くても十数種類でしょうか。よく知られているものでは、ふつうに見られる順に、ヒメゲンゴロウ(小型種)、コシマゲンゴロウ(小型種)、クロゲンゴロウ(中型種)、ハイイロゲンゴロウ(小型種)、シマゲンゴロウ(小型種)、ゲンゴロウ(大型種)など。これらの種の多様性を指標に、地域の水辺の環境評価ができるはずです。そうした方面の研究が進むことも期待されます。


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2013年06月20日

お故郷(くに)はどこ?・・・モリアオガエル

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 雨の降りしきる池の周囲、木々の緑に白いものがたくさんついています。モリアオガエルの卵塊です。このカエルは本州の山地に分布し、天然記念物に指定されている場所もありますが、全体としては数が少ないわけではありません。

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卵塊の大きさはリンゴの実ほど             メスを待つオス

 5〜6月、メスは池に入って膀胱に水を吸い込み、木に登ります。オスは池のまわりでココココッ、コッコッコッとたくさん鳴いています。その声でメスをひきつけながら、より早くメスに気づいたものが有利。メスの背中の中央に抱きつければ、数百個の卵の多くを受精させることができるからです。
 メスが粘液を出しながらそれを足でかきまぜると、白く泡立ちます。その中に産卵するのです。そして、ときには何匹ものオスが放精します。
 やがて泡の外側は固まり、中の水分を保ちます。二週間ほどでかえったオタマジャクシは、ポトリ、ポトリと池の中の世界へ旅立っていきます。

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(左)静岡県のモリアオガエル (右)新潟県のモリアオガエル(1匹のメスに3匹のオス)

 このカエル、太平洋側では背中に茶色い斑のある個体が多く、日本海側では斑がない個体が多いという地域差があります。
 DNAを用いた最近の研究では、本州の東北部のものと西南部のものは別の系統に分けることができ、分かれた年代は83〜105万年前だろうと推定されています(水野・松井 2012)。分かれた要因として、気候変動や地殻変動(山脈の形成など)が考えられています。 

 繁殖が終われば池から離れ、おそらく何kmも移動する個体もいるでしょう。でも、山の中で、池のありかは限られています。結局、翌年も同じ池に戻る個体が多くなるでしょう。平野部の湿地に広くみられるシュレーゲルアオガエルやアマガエルなどよりも、地域間の遺伝的交流が生まれにくい、つまり遺伝的隔離が起こりやすい種類なのかもしれません。

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オタマジャクシがかえる頃、卵塊の下には天敵のイモリが待ち受ける。モリアオガエルのいる古池では定番の光景。


posted by あーすわーむ事務局 at 18:30| Comment(0) | なし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする