2015年04月02日

ご当地外来種&希少種

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(上段左から)ギンヤンマ,ムラサキツバメ (下段左から)コムラサキ,ヤマトタマムシ

 昨年、東海地方のため池の多い地域に調査に行くことが何度かありました。
 池を中心に都市公園になっている場所もあり、市街地に囲まれながらもギンヤンマやチョウトンボが多く、金緑色のタマムシや、ヒクイナという鳥(他の地方では湿地や水田が残っていても壊滅に近い)も生息していました。ヒクイナのような種は、濃尾平野ぐらいの広さで良好な環境が保たれないと、繁殖集団として十分な個体数を維持できないのだと実感しました。

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水田にふつうにいたヒクイナの声は、古来より『くいなの戸をたたく音』として初夏の宵の風物詩だった

 一方、湿地には当然のようにアメリカザリガニとウシガエルが。胴長靴を履いて、沼の泥炭に腰まで浸かっていると、シオカラトンボが産卵に来ました。トンボが水面に尾をつけてちょん、ちょん、と産卵するそばから、メダカが集まってきて卵を食べていました。メダカが本当に在来のメダカであったかどうかは定かではありません。

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(左)夕方に上陸してきたアメリカザリガニ (右)ウシガエル

 やがて、ヌーッと目の前を泳いできたのはヌートリア。戦前から、毛皮をとるために南米から持ち込まれて養殖され、野生化した外来の大型ネズミです。目はよくないのでしょう、水面を音もなく2mまで寄って来たところで、じっとしている私のいる風景に、いつもと違う何かを察したと見え(双方10分ほどフリーズ)、また音もなくUターンしていきました。
 瀬戸内地方などもため池が多く、似たような希少種と外来種からなる生物相が特徴になっていると思われます。絶妙なバランスで成り立っていた生態系がこれ以上撹乱されないために、在来の希少種と外来種とが、できるだけ絶妙に無関係でいて欲しいものです。

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ヌートリア(ネコより大きいくらいのネズミの一種)




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2014年08月17日

日陰者にはしたくない

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比較的ふつうの種類:左からジャノメチョウ、ヒメウラナミジャノメ、ヤマキマダラヒカゲ、クロヒカゲ

 ヒカゲチョウやジャノメチョウという昆虫がいます。林の中などにいる、ベージュの地に目玉模様のチョウたち。花よりも樹液や獣の糞尿などによく来ていて、幼虫はササやメヒシバなどイネ科の植物や、スゲ類(カヤツリグサ科)を食べる種類が多い仲間です。

 意識して目を向けてみると、「日陰」にもいろいろあって、似た者ぞろいのこの仲間も、すみ分けや食い分けをしながら進化・分化してきたことがわかります。地味な特徴が紹介されがちなこの仲間、実は希少種も多く含まれています。

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減少している種類:左からキマダラモドキ、ヒメキマダラヒカゲ

 最大級のオオヒカゲ(長野県絶滅危惧U類)は、大きな翅のまったり感が魅惑的です。生息地はカサスゲなどのある、暗く湿った林。生い茂ったやぶをふわりひらりとすり抜けられる、不思議な大型種です。でも、チョウのメッカ、軽井沢でも、生息地はごくせまい一ヵ所しか知られていないほど限られています。そこから明るいところへ出る習性もほとんどないので、分散していくこともあまり期待できません。

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暗い林から出ることがないオオヒカゲ

 地味なチョウたちが地味なものを食べ、ひっそりと暮らしているだけなのに、なぜ生存を脅かされなければならないのでしょう。
 食草の分布を調べるのは、言うほどたやすくありません。食草があってもなぜかいない、ということも珍しくありません。危険分散のためチョウを移植するのも、移植先にそれまでいなかった原因を調べなければ、徒労に終わるかもしれません。移植による他への影響も考えなければなりません。
 たくさんの生きものが同様な状況にあるのですから、地域にできるだけ複雑多様な環境を残しておくことは絶対です。たとえば気候や地形や水脈を変えないこと。日なたも日陰も未来に残すべき環境なのです。

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めったに翅を開かないオオヒカゲ。目玉状ではない黒い斑紋も特徴



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2014年03月31日

鳥の混群(2)

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(左から)キクイタダキ、ヤマガラ、ヒガラ

 シジュウカラなどを見ていると、「種類ごとに違う採食習性があるからこそ、混群の意義がある」ということがよくわかります。ヒガラやキクイタダキは針葉樹の枝葉でアリマキなどの細かいものをついばみ、シジュウカラはしばしば地上で落ち葉をめくっています。コガラは枯木を壊すようにむしり、枝の下側にしがみつくのも得意。コガラやヤマガラは、樹皮のすきまに種子を埋め込みます(貯食)。そうした行動を互いに見ながら、「そうか、そこか」とまねしたり、かすめ取ったりする相利関係があるのです。

 2〜3月になると、軽井沢の農耕地にヒバリたちが戻ってきて、なわばり分散をします。ここでは、毎年4月の初めに野焼きが行われますが、そんな日も、オスたちは煙に巻かれたなわばりを見捨てず、空でさえずり続けます。
 しかし、4月下旬に13cmの積雪に見舞われた朝、彼らはついになわばりを解除しました。再び冬と同じ、7〜8羽の群れになっていたのです。ヒバリたちは、雪の積もりにくい水辺や、雪の融けやすいアスファルトのわきなどで、中にホオジロ、ホオアカ、カシラダカ、カワラヒワなどを交えて、群れ生活に逆戻りしていたのです。
 食事場所が限られる場合、わずかな資源をめぐってなわばり争いするより、仲たがいしないルールにして、共同で食物探しや敵への警戒をする方がコストが少ないので、この切り替えは理にかなっています。これはおそらく内分泌系も関係したスイッチの切り替わりでしょう。

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