2013年12月08日
鳥の混群(1)
左奥からオオバン、キンクロハジロ、ホシハジロ、マガモ
違う種類の動物からなる群れを「混群」といいます。冬は鳥たちの混群をよく見る季節です。
池のカモは、同じ敵に対して、別種でも一団となって逃げます。できるだけ大きな群れになり、その中へ中へと入る方が、自分の命を守りやすいのでしょう。少しでも群れからはずれた1羽が、敵の標的になりやすいからです。
混群の一つの定義として、2種類3羽以上、互いに25メートル以内、最短5分は維持され、同じ方向に30メートル以上移動する、というのがあります。その意味では、カモの群れは、敵が来たときの一時的な逃避手段であり、混群とはいいきれないときもあります。
ヤマガラ(左)とシジュウカラ ヒガラ
林で見られるシジュウカラやエナガを中心とした群れは、かなり継続的な混群です。似た者同士ですが、林内での利用空間や採食方法が微妙に違います。「林で生きる」とひとことで言っても、そこには多様なニッチがあるわけです。いわば「目のつけどころ」の違う者同士で集まれば、敵と食物の発見が効率的になります。梢にいるエナガがいち早くタカを発見し、警戒声をあげると、他の種類もやぶへ逃げ込み、コゲラは木の幹にぴたりと身を寄せるといった具合です。
コガラ エナガ コゲラ
2013年09月08日
コナラ林のわくわくツアー
テントウムシ(ナミテントウ)にいろいろな斑紋のものがいることはよく知られています。コナラの葉で交尾している2匹は、明らかに赤い星の数が違います。右の方にはアリマキと、アリマキが出す甘い汁をもらうクロクサアリ。テントウムシはアリマキの天敵ですから、このアリたちは、アリマキをテントウムシから守っているに違いありません。クロクサアリは集団でアオムシを襲って食べたりもします。コナラの木の根元に、彼らの巣がありました。
朝日を浴びに林縁に出てきたムモンアカシジミ。数が減少しているチョウです。このチョウは、クサアリ類の発生しているコナラやクヌギの木を探し、卵を産みます。幼虫は木の芽も食べますが、やがてアリマキの出す汁を吸い、アリマキそのものも食べる肉食性になります。この幼虫はアリに襲われないよう、アリマキと同じ匂いの物質を出しています。そのため、クサアリは何となく幼虫につきまとい、なかば騙されて、幼虫を保護します。
幼虫はクサアリの通り道でさなぎになりますが、そこからが大変です。さなぎから羽化すると、もう匂いは出ないからです。たちまちアリに囲まれて、飛べないうちに襲われてしまうこともあります。翅が伸びきるまで、新成虫は安全な場所に、命からがら走っていきます。
朝のムモンアカシジミを反対から見ると、左側の羽がちぢれたようになっていました。アリに襲われる中で、上手に羽化できなかったのでしょう。
ムモンアカシジミの生活史をぜひご参照下さい(『軽井沢の蝶』より)
雑木林はどこもかしこも昆虫の王国。ツアーの魅力はたっぷりです。
コナラの切り株に産卵するクロナガタマムシ 鉈目にひそむスジクワガタ
2013年07月15日
ゲンゴロウ類の種多様性
ゲンゴロウといえば、昔は田んぼにもふつうで、長野県などでは食用にもされていました。ところが近年の激減はただごとではなく、2012年には準絶滅危惧種から「準」が取り除かれるランクアップ(環境省 2012)。
(左)オモダカと、実りの稲穂
(右上)ゲンゴロウ (右下)ヒメゲンゴロウ(左)とコシマゲンゴロウ
長野県のある地方では、約10年前にドジョウとともに大量死しているのがみつかりました。水田の除草剤などが影響した可能性も。空を飛んでため池と水田を行き来するゲンゴロウも、濃い農薬にはやられてしまいます。さらに、ブラックバスが放たれた池では壊滅しますし、マニアによる採集圧も馬鹿になりません。一方、広島県尾道市では、自然にやさしい農法のシンボルとして、「源五郎米」のブランド化に成功しています。
さて、大量死以来みつかっていなかったゲンゴロウを探しに探し、つい最近、再発見しました。この地域では、1980年代後半に残っていた水田(稲作全盛期の半分以下)の90%が、その後、休耕田に変わり、乾燥化が進んでいます。最大のため池にはブラックバスが泳いでいます。再発見がつかのまの喜びとならぬよう、彼らの生息の実態把握と環境保全のため、すぐに策を講じたいものです。
(上左)ゲンゴロウ。弱った小魚やカエルの死骸などを食べる
(上右)ゲンゴロウによく似た別の仲間、ガムシ。こちらは水草などを食べる。やはり減少が心配されている
(下)まだ水の残る休耕田。浅瀬には浅瀬ならではの種類がいるはず
日本全体では140種類ものゲンゴロウがいますが、一つの地域では多くても十数種類でしょうか。よく知られているものでは、ふつうに見られる順に、ヒメゲンゴロウ(小型種)、コシマゲンゴロウ(小型種)、クロゲンゴロウ(中型種)、ハイイロゲンゴロウ(小型種)、シマゲンゴロウ(小型種)、ゲンゴロウ(大型種)など。これらの種の多様性を指標に、地域の水辺の環境評価ができるはずです。そうした方面の研究が進むことも期待されます。